学校の教育現場で、生徒が実用的な英単語を習得するには、基本動詞のコアイメージを理解させることが大切です。学校の英語の授業では、英単語の基本動詞が持っているイメージについて説明されることは、あまりありません。
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基本動詞のコアイメージを理解すると、適切な英語表現ができるようになるだけではなく、専門的な英語表現をする土台にもなります。コアイメージを理解すると、正しい英単語の使い方がわかるので、効率的に学習を進めることが可能です。今回は、「PEN英語教師塾」の動画レッスン講義シリーズから、英語力について定義した「英語の基本動詞力と基本動詞の意味論」を紹介します。
目次
英単語の知識よりも語彙力を身に付けることが大切生徒に、英語学習の苦手な点を聞くと、多くが英単語と答えます。代表的な英単語の学習方法は、以下のようなものがあります。
教科書で見つけた新しい単語を覚える英単語帳を使って覚える
英単語の知識を増やしても、語彙力を身に付けなければ実用的な英語力は身に付きません。使える語彙力を身に付けることで、英単語を適切に使えるようになります。
それぞれの単語が持つ意味を理解して語彙力を鍛える使える語彙力とは、次の2つを含んだ技術を意味します。
語を使い分ける力(差異化)語を使い切る力(一般化)
差異化とは、hurtとdamage、speakとtalkなど、日本語に訳すと意味が似た単語を使い分ける力のことを意味します。一般化とは、breakという動詞を「壊す」といった意味だけではなく、他の状況でも使い分けることができる技術を意味します。
語彙力は、基本語力と拡張語力によって構成されるので、まずは基本語力を手に入れることが、使える語彙力を身に付ける第一歩になります。基本語力が身に付けば、拡張語を身に付けられるようになります。英単語をやみくもに暗記するだけでは、基本語力は身に付かないので注意しましょう。基本語力は、さまざまな場面で使用される共通ドメイン(コアドメインを含む)を意味します。拡張語力は、専門的な分野で使われる英単語(個別ドメイン)を意味しています。
語彙は一般領域と専門領域の2種類に分けられる語彙を2つの領域(ドメイン)に分けて考えると、共通ドメインと固有ドメインに分けられます。固有ドメインとは、政治や環境など専門的な領域で主に使われる語彙のことです。共通ドメインとは、異なる専門的な領域でも、共通して使われる語彙のことです。
共通ドメインの基本語は500個共通ドメインとして、幅広い分野で利用される語彙をプロト言語と呼ぶことがあります。プロトは、原形を意味する言葉です。プロト言語は約500あると考えておきましょう。プロト言語には以下のような語彙が含まれます。
名詞:thing,way,matter,etc.形容詞:big,deep,good,etc.動詞:take,get,keep,etc.副詞:ever,yet,still,etc.接続詞:and,because,when,etc.前置詞:on,in,at,etc.助動詞:can,may,must,will,would,etc.代名詞:it,this,they,etc.
2,000ページほどの英語の辞書があるとします。辞書全体の半分以上のページが、500個の基本語の説明に使用されているという意見があるほどです。辞書で使用されているページ数を考えると、500個の基本語が持つ意味の理解が重要だとわかるでしょう。
共通ドメインの中心となるコアドメイン500個の基本語のうち、特に重要な語彙をコアドメインと呼びます。コアドメインの特徴は以下の3点に集約されます。
1.モノとモノを関係づけてコトや関係を語る(関係づけ機能)
2.意味の使用域が大きい(表現可能性)
3.使用頻度が突出している
コアドメインの数はそれぞれ、基本動詞が約50個、前置詞が約30個です。中には、take offなどの句動詞(基本動詞と前置詞)という表現が含まれる場合もあります。
頻繁に使われる基本動詞20個出現頻度が特に高い基本動詞は、以下の20個です。
take, give, get, have, hold, keep, make, break, cut, be, put, set, catch, go, come, run, carry, bring, do, work
意味が似ている動詞30個(似たもの動詞)
意味が似ているが、区別が必要な動詞が15セット(30個)あります。
look & see, speak & talk, say & tell, hit & strike, listen & hear, throw & cast, push & press, pull & draw, fall & drop, clear & clean, remain & stay, lay & lie, spread & extend, close & shut, lift & raise
英語学習を始めたばかりの中学生と高校生は、lookとseeの使い分けも難しく感じるでしょう。日本語訳は同じでも、意味に違いがある単語は、コアイメージを理解すると、用法を見極めることができるようになります。
覚えておきたいその他の基本動詞授業の中で集中的に取り扱っておくべき単語は、基本動詞20個と似たもの動詞30個ですが、その他の基本動詞も覚えておくと便利です。
stand, show, leave, reach, miss, fix, move, pass, turn, change, meet, touch, operate, become, play, ask
基本動詞は日常表現や名文句で使用される基本動詞は日常生活の表現をする英文で、欠かすことができません。
take a shower シャワーを浴びるput on a shower cap シャワーキャップをかぶるdraw the shower curtain シャワーカーテンを閉めるturn on [off] the shower シャワーを出す [ 止める ]be in the shower シャワーを浴びているleave the shower running シャワーを出しっぱなしにする
基本動詞は名文句や広告でも利用されています。
1. A wise girl kisses but does not love, listens but does not believe, and leaves before she is left. [Marilyn Monroe]
「賢い女の子は、キスはするが愛さない。耳は傾けるが信じない。そして捨てられる前に捨てる」 – マリリン・モンロー
2. Give us 22 minutes. We’ll give you the world. [CBS 10-10 news]
「22分ください。そうすれば、私たちはあなたに世界を提供します」 – CBS10-10news
3. Logic will get you from A to B. Imagination will take you everywhere. [Albert Einstein]
「論理はあなたをAからBへ連れて行きます。想像力は、あなたをどこへでも連れて行きます」 – アルバート・アインシュタイン
4. We must become the change we want to see in the world. [Mahatma Gandhi]
「私たちが世の中に見たいと思う変化に、私たち自身がならなければならない」 – マハトマ・ガンジー
基本語力の習得を邪魔するのは日本語頻繁に利用される基本動詞、基本語力ですが、習得は難しいとされています。基本語力とは、「基本語を使い分けつつ、使い切る力」のことです。「使い分け」とは差異化を意味し、使うべきではない場面で基本語を使ってしまうミス(使い過ぎ)があります。「使い切る力」は、一般化を意味しますが、使用するべき場面で語彙を使えない使い残しという症状も起きてしまいがちです。使い過ぎと使い残しの2つの失敗が起きてしまうことから、基本語力の習得は難しいと言われています。
第2言語習得の研究では、既に習得した知識によって言語を理解すると考えるのが一般的です。第2言語である以上、自然な学習をすると、日本語を通して英語を理解することになります。新しい単語と出会うと、日本語に当てはめてしまうということです。基本語力の習得においては、この現象が妨げになります。
コア理論で共通の概念(コア)を学ぶ基本語のコア(概念)を身に付けてしまえば、適切な英語表現ができるようになるでしょう。辞書を開くと、基本動詞の意味がたくさん並んでいることからわかるように、基本動詞が使用される状況は多岐にわたります。意味もあいまいであることがあるでしょう。日本語訳を覚えるのではなく、辞書に記載されている、単語ごとの状況を理解すると、適切な場面で基本語が使えるようになるはずです。
putは「何かをあるところから動かして、あるところに位置させる」putのコアイメージは「何かをあるところから動かして、あるところに位置させる」です。日本語訳では「置く」と表現されますが、コア概念は以下の図のようなイメージを持っておきましょう。
takeは「自分のところに取り込む」
takeのコアイメージは「自分のところに取り込む」です。「取る」と日本語に訳して表現されますが、基本動詞の意味は以下の図のようなイメージを持ちましょう。
動詞の意味はあいまいだから汎用性が高い
基本語のコアを理解すると、適切な場面で語彙を使い分けることができるようになります。基本動詞を日本語に当てはめて考えると、あいまいで使い分けられないこともあるでしょう。辞書で基本語を調べる場合、単語ごとの意味よりも使える状況を理解しておくことが大切です。
コアイメージは図式と記述で理解する生徒がコアイメージを理解するためには、2つのシンボルが必要になります。1つは図式的表象、もう1つは記述的表象です。生徒がコアイメージを理解できるように、図と記述の両方を提示しましょう。
コアイメージを学習する際、静止画として記憶してしまいがちなので注意しましょう。教科書や黒板に書かれた図式を目にするので、コアイメージは静止画として記憶してしまうでしょう。コアイメージは静止画ではなく、動きがあるものとして記憶しておくことで、適切な英語表現ができるようになります。コアイメージを覚えたら、以下の2つの方法で利用できるようになるでしょう。
図式の焦点化図式の投射
図式の焦点化とは、図式の特定の部分に焦点を当て、単語を使う用法をいいます。takeのイメージはある空間から、自分のところに何かを取り込むことですが、図式のどこに焦点を置くかで、意味が変わります。
A:「あるところから」
B:「持っている」
C:「取り込んでいる」
「シミを除去する」という場合はAに焦点が当てられています。 Cに焦点を当てた用法の場合、「1等賞を獲得する」という意味で使うことが可能です。コアイメージの特定の位置に焦点を当てることで、takeという1つの単語でも、複数の意味に分けることができます。
図式の投射とは、コアイメージをさまざまな状況に応用するということです。driveのコアイメージは、「ある対象に外から働きかけて動かす(駆る)」ですが、次の3つのすべての表現に適用できます。
drive the cattle 牛を追い立てるdrive the horse 馬で走るdrive the car 車を運転する
牛をむちで追い立てる、馬を手綱で操る、アクセルを踏んで車を動かす、それぞれの例文で「ある対象に外から働きかけて動かす(駆る)」というコアイメージが共通しています。同様に、以下の3つの例文もコアイメージの投射で理解ができます。
The rain drove me inside. 雨が降ってきたので屋内に入ったThe coach has been driving us into the ground lately. コーチは近頃私たちをへとへとになるまで追い込んでいるHe drove the last nail into his newly finished boat. 彼は新しくできたボートに、最後のクギを打ち付けた
雨という力が、人を屋内へ追いやる、コーチの力が生徒を追い立てるトレーニング、クギをボートに向けて打ち付ける力が働く、それぞれにdriveのコアイメージが共通しています。
基本語力を身に付ける環境作りが肝心学校教育の現場で、英語が身に付かない理由は、母語の影響があると考えられます。第2言語を習得する過程で、母語を介して理解するのは自然なことです。自然な学習をすると、コアイメージは身に付きません。コアイメージを取得するためには、有効なエクササイズが求められます。基本動詞の意味をどうとらえるか生徒に教えていくことが、教育現場の課題といえるでしょう。
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